フォードvsフェラーリ(2019年)
2019年公開のアメリカ合衆国の実話をもとに作られたドラマ映画です。
本作品を一言でいうと、レース経験のないアメリカの大手自動車メーカー、フォードが元レーサーのカー・デザイナーと凄腕のイギリス人ドライバーが手を組み、ル・マン24時間耐久レースで絶対王者のフェラーリに挑むといった内容です。
映画に登場するGT40の名前の由来ですが、アメリカのフォード・モーターが開発したレーシングカーで車高が40インチ(1016mm)からきています。
基本情報
公開年:2019年
製作国:アメリカ
原題:Ford v Ferrari
配給:20世紀フォックス映画
上映時間:2時間33分(153分)
映論区分:G(年齢にかかわらずだれでも閲覧できる)
時代設定:1963~1966年頃
みどころ
【みどころ①】デイトナでシェルビーから「7000RPM以上にエンジン回転数を上げて、ブッチギレ!」のサインが出てからのマイルズの走り
【みどころ②】シェルビーがレーシングカー(GT40)の助手席にフォードの社長を乗せて走るシーン
【みどころ③】ル・マンでのマイルズとフェラーリのトップレーサー(バンディーニ)との駆け引き
スタッフ
監督:ジェームズ・マンゴールド
<主な監督作品>
「コップランド」(1997年)
「17歳のカルテ」(1999年)
「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」(2005年)
「3時10分、決断のとき」(2007年)
「ナイト&デイ」(2010年)
「LOGAN/ローガン」(2017年)
「フォードvsフェラーリ」(2019年)
キャスト
マット・デイモン
<主な出演作品>
「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1997年)
「プライベート・ライアン」(1998年)
「オーシャンズ12」(2004年)
「ボーン・スプレマシー」(2004年)
「ディパーテッド」(2006年)
「インターステラー」(2014年)
「オデッセイ」(2015年)
「ジェイソン・ボーン」(2016年)
「フォードvsフェラーリ」(2019年)
クリスチャン・ベール
<主な出演作品>
「太陽の帝国」(1987年)
「アメリカン・サイコ」(2000年)
「リベリオン」(2002年)
「マシニスト」(2004年)
「ダークナイト トリロジー」
・「バットマン ビギンズ」(2005年)
・「ダークナイト」(2008年)
・「ダークナイト ライジング」(2012年)
「プレステージ」(2006年)
「3時10分、決断のとき」(2007年)
「ターミネーター4」(2009年)
「ザ・ファイター」(2010年)
「アメリカン・ハッスル」(2013年)
「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015年)
「バイス」(2018年)
「フォードvsフェラーリ」(2019年)
ジョン・バーンサル
<主な出演作品>
「ウォーキング・デッド」(2010-2012年、2018年) ※テレビドラマ
「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(2013年)
「フューリー」(2014年)
「ボーダーライン」(2015年)
「Marvel デアデビル」(2016年) ※テレビドラマ
「ザ・コンサルタント」(2016年)
「Marvel パニッシャー」(2017-2019年) ※テレビドラマ
「フォードvsフェラーリ」(2019年)
受賞歴
第92回 アカデミー賞(2020年)
・音響編集賞
・編集賞
あらすじ ※ネタバレ注意
レーシングドライバーのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)は、1959年のル・マン24時間レースで優勝する栄光に輝いたが、その後心臓病のためレーシングドライバーを引退する。
引退後は、理想のスポーツカーを作るため、会社「シェルビー・アメリカン」を設立し、大勢のセレブな顧客を抱え、経営者兼カーデザイナーとして成功していたが、心の中ではレースに参加することを望んでいた。
一方、シェルビーの友人でイギリス人レーサーのケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)は、第二次世界大戦の終戦後、イギリス軍を除隊すると、家族とともにアメリカへ移住し、自動車整備工場を経営しながらレースに参戦していた。
マイルズが整備する車は、マニアックな整備が施され、一般人には扱いにくい品質になり、マイルズ自身のひねくれた性格と人付き合いが下手もあいまって、客は離れるばかりで経営はラクではなかったが、純粋に車を愛するマイルズは、妻モリーと息子ピーターの三人で仲睦まじい家庭を築いていた。
ある日、レース会場でマイルズと出会ったシェルビーは、会話の流れからマイルズを挑発してしまい、怒ったマイルズからレンチを投げつけられる。
しかし、当日のレースでは、マイルズは巧みなレース展開を見せ、冷静な判断と大胆な決断でライバルたちを追い抜き、最終周回にトップを奪い見事優勝する。
レースには優勝したマイルズだったが、税金の滞納から整備工場を差し押さえられてしまう。
レーサーとしてもう若くはない45才という年齢もあり、家を差し押さえられるのを避けるために、レースをやめて地道に働くことを妻モリーに告げる。
1963年、アメリカの巨大自動車メーカーであるフォード・モーターを率いる社長ヘンリー・フォード2世は、会社の現状に飽き足らず、従業員から成長のアイディアを募る。
30代にして早くもフォードの副社長兼総支配人にまでのぼり詰めたリー・アイアコッカ(ジョン・バーンサル)は、これから自動車を新たに買い始めることになるベビーブーム世代の購買意欲をかき立てるため、従来のフォードのブランドイメージを一新することを考える。
そして導いた策は、ル・マン24時間レースを4連覇と、世界的憧れブランドにも関わらず経営危機に陥っているイタリアの自動車メーカー、フェラーリの買収であった。
フェラーリ本社を訪れたアイアコッカを出迎えた創業者のエンツォ・フェラーリは、「市販車部門はフォードが株の過半数を持つが、レース部門のスクーデリア・フェラーリはフェラーリが支配する」という条件について検討する。
しかし「仮にフォードがレース参戦に反対の立場となった場合はレースから撤退する」という内容は、スポーツカー生産よりもレースへの参加に価値を置くエンツォにとって論外であり、土壇場でフォードの提案を破談にしたばかりか、その裏でフォードをダシにして同時にフィアットのジャンニ・アニェッリと売却話を進めていた。
フォード提案の破談の際、エンツォはアイアコッカに対し、「醜い工場で醜い車を作ってろ、頑固なボスに伝えろ、傲慢な重役どもは無能ぞろいだ」、更に社長ヘンリー2世のことを「彼は初代とは違う、所詮は2世だ」と言い放ち交渉は決裂する。
フェラーリの買収には失敗したアイアコッカだったが、ヘンリー2世への報告で悪びれず、エンツォの言葉をそのまま伝える。
激怒したヘンリー2世は、ル・マンでフェラーリを打ち負かすことを決意し、アイアコッカに最高のエンジニアと最高のドライバーを集めるよう支持する。
レースに勝つためには経験豊かな監督とドライバーが必要になると心得ていたアイアコッカは、ビジネスを通して関係の深いシェルビーに、レースに参戦するためのマシン開発を依頼し、レースへの情熱が冷めないシェルビーはこれを承諾する。
シェルビーは開発担当のテストドライバーとして、友人でレーサーとして信頼をおくマイルズに誘いをかける。
すでにレースから身を引くことを決めていたマイルズは、わずか90日で王者フェラーリを負かす車を作るというプロジェクトに気を惹かれるが、シェルビーにフォードのような巨大組織が思い通りに車を作らせてくれるとは思えない、組織上、様々なところから横槍が入りうまくいかないと伝え、返事を保留する。
シェルビーは、新車マスタングとル・マン参戦のフォードの発表会にマイルズを招待し、そこで参加するかどうか確認しようとするが、そこには着飾ったフォードの重役が並び、ル・マン参戦と並ぶフォードの目玉であるフォード・マスタングの発表会を兼ねた会場はマイルズにとって居心地の悪い場所だった。
展示されている自動車に興味津々で乗り込もうとした息子のピーターに「手を触れないように」と注意した上級副社長のレオ・ビーブに対し、マイルズはフォード車に対するありったけの悪口を浴びせると、シェルビーのスピーチの途中で帰宅してしまう。
後日、それでもマイルズを諦めきれないシェルビーは、イギリスから空輸されてきたばかりのフォードGT40の試乗にマイルズを誘い出す。
GT40に乗り込み、その走りを試したマイルズは、短期間での試作品を認めつつも解決すべき問題点をシェルビーに伝える。
フォードから提案された報酬の額も経済的に苦しいマイルズにとっては魅力的であった。
そして、レーサーという夢を諦めきれない。
妻の後押しもあり、マイルズはシェルビーと手を組みレースの世界に戻ることを決意する。
巨大組織フォードの素早い対応、2人の的確な意見、優秀なエンジニアの協力でGT40の開発は進むが、24時間壊れずに走り切るレースカーを準備するには、あまりに時間が足りなかった。
そのようなレースまで時間がない状況でこそ、開発中のマシンのことを最も良く知るマイルズをレース本番で走らせることは当然とシェルビーは考えていたが、フォードは自分のことしか考えていないマイルズを信頼をモットーとしているフォードのイメージに相応しくないとして、ル・マンではマイルズを走らせないことを決定する。
マイルズの心配が最悪のかたちで的中してしまったが、自らの無力をわびるシェルビーにマイルズは「オイル経路が問題だ、漏れた時、左リアのディスクにオイルが落ちる」「日が昇ったら、ペースに注意しろ、ギアボックスが過熱する」と告げシェルビーの事務所を出る。
マイルズは、アメリカの工場で妻モリーとともにラジオでレースの様子を聞く。
レースでは、コースレコードをたびたび更新するなどGT40の速さが明らかになる一方で、マイルズの予想通りギアトラブルで棄権、5連覇を達成したフェラーリに対し、フォードは全車リタイアという結果を招く。
社長のヘンリー2世に対し敗戦の報告を行うためにフォード本社を訪れたシェルビーは、敗れた要因を率直に、フォードの体制について、会長と現場の間に何十人もの人間が入り込んで正確な情報伝達、決断が十分できておらず横槍が入る体制だということと、フェラーリを精神的に追い詰めたことを伝え、社長がル・マンで勝つ気があるかを確認する。
さらに指揮官も一人にしてもらい、継続してレースを任せてもらうよう了承を得る。
シェルビーは、ル・マンへの再挑戦のためにマイルズの家を訪れる。買い物帰りのマイルズはシェルビーの都合の良い態度に怒り、喧嘩が始まるがお互いに力尽き道に横たわる。
二人の本音を理解し、喧嘩の一部始終みていた妻モリーがマイルズが買ってきたものが台無しになったことを見かねて買い物に行く。
再起した2人の力でGT40の開発は加速するが、デイトナまで3週間しかないにも関わらず、ブレーキには大きな不安を抱え、テスト走行中にブレーキのフェード現象が原因で車が炎上する。
一方で、レース計画の指揮を全面的に任され、シェルビー、マイルズの2人とはなにかと折り合いの悪い副社長レオ・ビーブが送り込まれ、更に900万ドルの出資ということで社長のヘンリー2世が開発現場に訪れる。
そこでシェルビーは、GT40の助手席に社長を乗せて全開で走り、GT40が万人が扱えない車&ル・マン優勝はマイルズしか果たせないことを伝える。
更に直近に控えているレース、デイトナにマイルズを出場させて勝ったらマイルズをル・マンに出場させ、負けたらシェルビーの会社「シェルビー・アメリカン」を譲る約束をする。
レース当日、「レース中のエンジンの回転数に至るまで全てを自分が決める」という副社長ビーブの指揮のもとで思うようなレースを出来なかった2人だが、シェルビーは、マイルズの「6000回転以上回せる」という言葉を信じ「7000+ GO LIKE HELL」(7000RPM 以上にエンジン回転数を上げて、ブッチギレ!)のサインを送る。
結果マイルズが優勝し、シェルビーは兼ねてからの希望であったマイルズを従えてのル・マン参戦を実現させる。
ついに、ヘンリー2世とエンツォの見守る中、1966年のル・マンスタートの火蓋が切られる。
マイルズは、フェラーリのトップレーサー、バンディーニとの駆け引きにも勝ち、とうとうトップに躍り出るがまたしても副社長ビーブの提案により、3台のフォードで横一列に並んで同時優勝するよう指示が出る。
怒ったシェルビーは、いちよマイルズに伝えるが自身で決めるよう言う。
マイルズは、レース走行中に迷った挙句、減速して3台優勝を実現させるが同じフォードのレーサー、マクラーレンが1位と発表される。理由は、マクラーレンの方が後ろからスタートしたということだった。
これを見ていたフェラーリ創業者のエンツォは、マイルズに敬意を表してスタンドから帽子をとって挨拶する、それを見たマイルズは軽くうなずく。
このレースの後も二人はGT40の更なる進化に力を注ぎマシンの開発を進めるのであった。
しかし、マイルズはマシンのテスト中、またもやブレーキが利かなくり、テストコースでクラッシュし、この世を去る。
半年後、シェルビーはマイルズの家に訪れ、事務所に額に入れて飾ってあったマイルズから投げつけられレンチを息子のピーターに渡し、その場を去る。
感想
スポーツ映画かと思いましたが、カーレースを通した男同士の友情と親子の絆を描いたドラマ映画です。
2時間30分以上と映画としては比較的長めですが、実話をもとに作られているせいか内容が非常に面白く、最後まで時間を感じず見入ってしまいました。
車にあまり興味のない人も楽しめると思いますが、音と映像によるレースの臨場感で、車に興味のある人は特に楽しめると思います。
今回、特によかったのが俳優クリスチャン・ベールの演技です。
今まで「ダークナイト」「ターミネーター4」のイメージが強かったですが、その時とは別人でした。当たり前ですが流石プロです。
2013年の製作開始当初は、主役にトム・クルーズ、ブラッド・ピットを起用する話もあったそうですが、どういった流れか、主役はマット・デイモンとクリスチャン・ベールになりました。このコンビで正解だったと思います。
ここ半年に見た「映画・ビデオ」の中では、3本の指に入るくらい楽しめました。
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評価
4.3点/5点満点